W3CとHTMLの歴史:HTML4.01、XHTML、そしてHTML5のゆくえ

この記事では、W3C(World Wide Web Consortium)が策定してきたHTML規格の歴史を振り返りながら、現在ではすでにW3Cの手を離れた「HTMLの標準化の行方」について解説します。
HTML4.01、XHTML、HTML5と続く進化の過程を整理して、なぜW3CがHTML規格を手放したのかを理解しましょう。

1 W3Cとは?

W3C(World Wide Web Consortium)は、1994年にティム・バーナーズ=リー氏によって設立された国際的な標準化団体です。
HTML・CSS・XMLなどの仕様を策定し、「オープンで誰でも使えるWeb技術の標準化」を目的に活動してきました。

2 HTML4.01 ― 静的Webの完成形(1999年)

1999年12月に勧告されたHTML4.01は、現在のWeb構造の基礎を築いた仕様です。
「レイアウト」「フォーム」「国際化」「スタイルシート(CSS)」が強化されました。


<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN" "http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd">
<html lang="ja">
<head>
  <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=UTF-8">
  <title>HTML4.01サンプル</title>
</head>
<body>
  <h1>W3C HTML4.01</h1>
  <p>これはHTML4.01の例です。</p>
</body>
</html>
    

3 XHTML ― XMLによる厳格化(2000年代)

2000年に登場したXHTML 1.0は、HTML4.01をXML形式として再定義したものです。
構文の厳格さが特徴で、すべてのタグを閉じる必要がありました。


<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<!DOCTYPE html PUBLIC "-//W3C//DTD XHTML 1.0 Strict//EN" "http://www.w3.org/TR/xhtml1/DTD/xhtml1-strict.dtd">
<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml" xml:lang="ja" lang="ja">
<head>
  <title>XHTML 1.0 Sample</title>
</head>
<body>
  <h1>XHTMLの例</h1>
  <p>すべてのタグを閉じ、小文字で統一する必要があります。</p>
</body>
</html>
    

4 HTML5 ― Webアプリ時代への進化

2004年、ブラウザベンダーが中心となってWHATWGを設立し、HTML5の策定を開始。
マルチメディア要素・API・構造化タグなどを追加し、Webアプリの基盤へと進化しました。


<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
  <meta charset="UTF-8">
  <title>HTML5サンプル</title>
</head>
<body>
  <header>
    <h1>HTML5の新構造</h1>
  </header>
  <article>
    <section>
      <h2>新しい要素</h2>
      <p><video src="sample.mp4" controls></video></p>
    </section>
  </article>
</body>
</html>
    

5 HTMLの現在 ― Living Standard時代

現在のHTMLはバージョン番号が存在せず、
HTML Living Standard として継続的に更新されています。

6 W3Cの現在 ― 他分野への注力

2019年にHTML標準化の主導権をWHATWGへ正式に委譲して以降、W3CはHTML仕様の更新からは撤退しました。
現在はアクセシビリティ(WAI)プライバシーセマンティックWeb
CSS・SVG・WebAuthnなどの分野を中心に活動を継続しています。

HTML自体はWHATWGが実装重視で進化を続け、W3Cは「Web全体の調和・倫理・相互運用性」を担う立場に変化しています。
両者の関係は対立ではなく、現在は相補的な役割分担に基づいて共存しています。

7 Googleの規格挑戦 ― AMP と Privacy Sandbox

Google は Web の高速化やプライバシー保護を目的に、自社主導で規格あるいは規格に近い技術仕様を提案・構築してきました。代表的なものとして、モバイル高速化を目指した AMP(Accelerated Mobile Pages)や、第三者クッキー削減・匿名化広告を目指した Privacy Sandbox があります。

AMP は軽量 HTML フレームワークとして多くの出版社に採用されましたが、「Google 検索/キャッシュありきの仕様ではないか」「Web 標準プロセスを経ていない」といった批判もありました。

Privacy Sandbox では、Topics API など多数のブラウザ上 API 提案が進行中で、「広告モデルを維持しつつプライバシーを確保する」という新しい規格的要件に挑戦しています。

これらの動きは、Web 標準化の主体が必ずしも World Wide Web Consortium(W3C)だけではなく、「ブラウザベンダー」「プラットフォーム提供企業」も仕様提案・実装を主導しうる時代であることを示しています。